大阪府指定天然記念物のシリブカガシの森
当社の8000㎡を超す社叢は、シリブカガシ・アラカシ・クスノキなどの照葉樹で形成されており、その神聖で静謐な空間は参拝者にやすらぎと心の落ち着きを与えてくれます。その神奈備に生息する潜在植生種の一つである【シリブカガシ】(1*)で形成された森は全国でも稀有で、学術的に貴重な存在です。シリブカガシは暖帯性照葉樹林の中でも南部に多く生育しており、まとまった樹林としてはこの地が日本の北限に位置し、大阪府下には二ヶ所しか存在が確認されていません。
昭和40年代に地元の植物研究家の現地調査により、和泉市に大阪府内では最大規模のシリブカガシの育成地が発見され、大阪平野丘陵部の植生を知る重要な手がかりとして注目されるようになりましたが、泉北ニュータウンの開発造成により樹林を形成する大部分が消滅。当社の社叢(シリブカガシの森)はさらに貴重なものとなり、昭和48年3月に大阪府の天然記念物として指定を受けました。平成元年4月には大阪府みどりの百選にも選ばれ、森の保全に力を入れていましたが、平成2年12月、バクテリア性【ガンシュ病】(2*)の発生を確認。その後、大半のシリブカガシがガンシュ病にかかり全滅の危機にありましたが、専門家の指導のもと地域が一体となり、数年をかけて治療と保護活動をおこない、ガンシュ病は収まりをみせ、その後発生することなく現在に至ります。

(1*) 暖地にはえるブナ科マテバシィ属の常緑高木。外見はアラカシと似ており、幹は直立して分枝し高さは15mにもなる。中国・台湾・九州・四国・瀬戸内海沿岸に分布。花期は9・10月ごろで、堅果(どんぐり)は翌年の秋に熟し、長さが2cm前後になる。和名は「尻深ガシ」の意味で堅果の底部がへこんでいるため。この地域では昔から食用ともされており、親しみをこめて「いっちん」と呼ばれている。

 

(2*) 病班は枝の基部あるいは穿孔性害虫の食害痕などの傷口から始まるところが多くまたヤドリギの寄生により衰弱した枝に発生する。傷を中心に樹皮が縦長の紡錘形に侵され、毎年少しずつ病患部が広がる。皮が死んだ部分は材が太らないので幹部は年とともに凹んでゆき、いわゆる永年性がんしゅ(癌腫)を形成する。病患部中央の樹皮はやがて剥離して材を露出し、そこから材質腐朽菌が侵入して材を腐らせる。

資料のダウンロード

報告書ダウンロード